大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1491号 判決

銀行業を営む被控訴人の内野支店長であつた畠山芳蔵は同支店より小柳俊郎及び長谷川康次なる者に数百万円の不良貸付があり右畠山はこれが回収につき焦慮していた折柄、控訴人においては当時落下傘用絹布をもつて作製した靴下を放出し、この販売周旋方を野沢浩に依頼していたが、野沢浩と面識があつた小柳は昭和二十四年六月頃野沢浩より右の話を聞いて、これを畠山に伝え、これと相談の結果控訴人よりの放出価格一足金百三十円は格安であるから、これを買受け他に販売すれば多額の利益を挙げること易易たることであるとし、その利益を以て前記不良貸付の回収に充てようとの計画を立て、畠山は被控訴人の承諾がないのに拘らず、その内野支店名義を使用して右靴下五千ダースを買受けることを決意し、同年六、七月頃小柳をして野沢にその意を通ぜしめ同人より控訴人に連絡し、ここに右靴下五千ダースの売買が被控訴人内野支店名義で控訴人との間になされた事実および右靴下は数回に分割し、同年八月下旬あるいは九月頃までに全部送付せらるべく、代金の内金百万円は直ちに支払わるべく残金は荷物の到着都度その数量相当分だけ被控訴人振出名義の手形で決済せらるべき約旨であつた事実ならびに同年十月頃までに控訴人より被控訴人内野支店宛に右靴下五千ダースを送付し、同支店およびその指図により野上誠一および小柳俊郎等が受取つた事実を認めうべく(中略)全証拠を以てするも、右認定を覆えし難い。よつて右畠山芳蔵に被控訴人を代理して右売買をなす権限があつたか否やにつき考えるに、右畠山が銀行業を営む被控訴人の内野支店長であつたこと前記認定したとおりであつて同人は商法第四十二条の規定により右支店の支配人と同一の権限を有するものと看做さるべきではあるが、その権限は無制限ではなく、当該支店における銀行営業に関する行為をなす権限に限られ本件のように靴下五千ダースの売買契約の如きは明かにその営業に関せざる権限外の行為というべきであるから、かかる行為につき前記畠山が代理権を有するものとは解するを得ない。

控訴人は右畠山にかかる代理権がなかつたとしても、代理権ありと信ずべき正当の理由があると主張するが、当時会社その他の団体等において会社員その他の職員の厚生のため物資を購入し、これを配給することが往々にしてなされたことがあるけれども、靴下五千ダース代金総額七百八十万円というが如き大量多額の買付が行員数の比較的少いことを予想せらる地方銀行の一支店においてなされるが如きことは、異常の事例であるというべく、右取引の相手方たるべき者はよろしく本店等につき当該支店長にその権限ありや否やを調査するを相当と認むべきところ、かかる挙に出ることなく、控訴人においてたやすく右畠山に右売買の代理権ありと信じたればとて、代理権ありと信ずべき正当の理由ありとはいひ難い。

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